母親に鶏肉を買う時は胸肉よりもも肉、と教わったのはいつのことだろう。
胸肉はどちらかというとぱさぱさしているが、もも肉は柔らかいから、というのが理由だったと記憶している。
胸より足の方がよく動く部位だから柔らかいんだろうな、という考えは彼女のものだったのか、
はたまた自分で思いついたこじつけだったのか。
というわけで、日本で鶏肉を料理する時はもも肉を使うことが多かった。
が。カナダで鶏肉というとチキンブレスト、つまり胸肉である。
手羽も足も売っているし、もちろん丸ごとチキンも手に入るが、もも肉は売っているのを見たことがない。
なぜなんだろう。
これはここに住む日本人の友人とも時々話題になる「なんとなく感じる日本との違い」のひとつです。
チキンと言えばこんなことがありました。
数年前にポル夫と一緒にクリスマスを日本の実家で過ごした。
クリスマス当日だったかどうか記憶は定かではないが、母親が「今日の夕食はチキンにしましょう」と言った。
わたしはポル夫に「今日の夕食はチキンだって」と伝えた。
そして予告通り夕食にはチキンが並んだ。
クリスマスの定番、あの骨のところを手で持って食べたくなるチキンの足、なかなか美味しかった。
ポル夫も美味しそうに食べていた(ように見えた)。
夕食の後でポル夫がわたしにそっと「チキン、丸ごとじゃなかったね」と悲しそうにささやいた。
日本生まれ日本育ちの平凡な日本人のわたしには、クリスマスのチキンと言えば鶏の足で全く違和感なかったが、
ポル夫はてっきり西洋的典型的クリスマスの風景であるところの、スタッフィングしたジューシーな
丸ごとチキンを想像していたらしい。おぉ。
可哀想と言えば可哀想、滑稽と言えば滑稽、ということで笑ってしまいました。
いやいや、丸ごとチキンが焼けるようなオーブンなんて実家にはないし。
そもそも食材としての丸ごとチキンだって、そんなに簡単には手に入らないし(と思う)。
はたまたこちらのスーパーのデリコーナーでは、たいていどこでも丸ごとチキンを焼いたものを売っています。
手抜きしたい気分の時はそれを買って食べ、残りはスープやサンドイッチに使います。
だからポル夫にしたら、クリスマスにチキンの足ではちょっと寂しく思えたんだろうねえ。
そう言えば。
ポル夫の友人で非常にエキセントリックな友人がいまして。
今はもう別れてしまったのだが、彼には一時期日本人の彼女がいて、その彼女が日本に帰った後も
しばらく遠距離で続いていたらしい。
ある年のクリスマスに彼は彼女に会いに日本に遊びに行くことになった。
日本の彼女と彼女のご家族にカナダのクリスマスを味わわせてあげたいと、
彼は丸ごとチキンが焼けるオーブンを事前に船便で送り、冷凍のチキンをカナダから持参していったらしい。
いや、チキンは日本で買ったのだったか。。。そうだよね、いくら何でもそうに違いない。
とにかく。
彼女のご実家のキッチンを占領して、無事に届いたオーブンでチキンの丸焼きを料理し、
彼女と彼女のご家族にご馳走したらしい。
かなり押しつけがましいというか、大胆というか、エネルギーと愛のこもったチキンですなあ。
というようなことをつらつら思い出したのは、もちろんポル夫が丸ごとチキンを買ってきたからです。
あたたかいうちに好きなだけ食べて、残りはまたサンドイッチにしてランチに持って行こう。

